遠方銀河の塊状構造の起源
最近の JWST 観測では、約 100 pc スケールの高い空間分解能が実現されたことで、z > 6 の銀河における内部構造が明らかになりつつあります。特に、一部の銀河では塊状構造(clumpy structures) を持つ銀河が発見されています。(Hainline+24, Chen+23, Tacchella+23)。より低赤方偏移 (z ≲ 4) の clumpy銀河形成については、観測的研究 (Elmegreen+13, Tasca+14, Ribeiro+17) と理論的研究 (Ceverino+10, Mandelker+14, 16) の双方で詳細に調べられ、特に冷たいガスの降着による激しい円盤不安定が重要な要因として提案されています。しかし、z > 6 における clumpy 銀河の形成過程はまだ十分に理解されていません。
そこでNakazato+24では、再電離期 (z ≥ 6) 近辺の銀河およびサブ銀河スケールのclumpを調べるため、最新の観測での検出感度を考慮したclump同定アルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムを ズームイン銀河形成シミュレーションFirstLight(Ceverino+17) から得た4000を超えるスナップショットに適用し、(サブ)銀河内におけるかたまりの性質を詳細に解析しました。その結果、Nakazato+24 では、z = 6 ~ 9 にある星質量が\(\sim 10^9 \, M_\odot\)以上の銀河のおよそ1-2割が実際clumpy 銀河として観測され得ること、そして多くのかたまりは銀河合体(major merger)を通じて形成されることを示しています。さらに、衝突によって誘発されたclumpは最終的に数千万年程度の力学的時間スケールのうちに合体してしまうこともわかりました (動画参照)。
今後、JWST と ALMA などを組み合わせた多波長観測により、高赤方偏移の clumpy 銀河形成の全貌がより明らかになると期待されます。